ペットボトルを3本ほどならべて、それを頭にテープでくくりつけて
「ピタゴラス!ピタゴラス!」
と叫んでいたら、あなたが本当に叫びたいのは「カラパゴス」だったんじゃないかなと冷静でいて少し茶目っ気のある、黒髪セミロングのメガネ少女(20)が僕に言った。
僕は自分の愚かさにを指摘してきた彼女を恥ずかしさのあまり、L字型の穴に放り込んでしまった。そしてその後、今度は間違いを指摘してくれただけの彼女を殺してしまった自分に後悔して、ローソンでから揚げ君を300個ほど買って、さっきの穴に投げ込んだ。
これだけあれば、飢え死にはしないだろう。
と、安心して、趣味の般若心経をアカペラしていると、なんと、さっきL字型の穴に放り込んだはずの彼女が僕の目の前に現れた。
彼女はどうやってあの穴から出てきたのだろう?あの穴は確か、深さ700メートルで、その壁はイギリス製のオートクチュールで、作った連中が作業中に食べたであろうケンタッキーの油でギトギトしていたので上って脱出はほぼ不可能だろうし、それに、穴のそこには比較的大きい新山千春が30人は生息しているとも聞いた。彼女はいったい・・・・
僕は好奇心を抑えきれずに思わず彼女のわき腹にあらかじめ暖めておいた、枕草子全集をたたきつけた。
彼女は頬を赤らめた。
聞くところによると、彼女の出身国では、男性が家に来た女性に「Jリーグカレー」を出したら、二人は永遠にシネマパラダイスのとりこになる。というしきたりがあるらしい。
つまり、彼女は僕のとった行為を「愛の告白」だと勘違いしたらしい。
あわてて僕は頭に刺さっているペットボトルを一本抜き取り彼女の口に押し込んだ。
こうすれば、彼女に僕の好物の「ピザポテト(レモン味)」を横取りされる心配はない。
安心した僕は、昨日東急ハンズで買った、口にくわえたネットで吹き上げたボールをうまくキャッチする道具を自分の口にくわえて、そのまま彼女の周りをうろうろした。
そうして7時間くらいたったときだった。もう、僕の視線には彼女も、般若心経も、エッフェル塔も映っていなかった。僕の意識はすでに鼻より少し上をさまようボールにだけ集中していた。
そして吹きかける息を調整してこの日792回目の「ガリアバル(オリジナル技。テクニカルルーティーンでより多い点数が入る)」を繰り出そうとしたそのときだった
ずるっ
何かにあしをとられ、僕の体は深く沈んでいった。
なんてこった☆じぶんでL字型の穴にはまっちまった!
長い落下の間に僕はあんな危ない場所でキモランヌ(競技名)をしていたことを後悔しつつも、落下を利用した荒業「レッセナ・ジュガスス」を編み出していた。
やっぱり僕は天才だ!
と思った瞬間、僕の体は穴の底に首からたたきつけられた。
そして、死んだ。
でも、たちこめるから揚げ君のにおいのおかげで、事なきを得ず生き返った。
キモランヌは2678-315で僕の圧勝だった。そのことを対戦相手のカマキリにつたえようとしたが、カマキリは僕のポケットのなかでとっくに潰れていたので諦めた。
このやろう、卵までうんでやがる!
と、彼のなきがらを投げ捨てようとしたとき、彼の体から何か汁のようなものが出ているのに気づいた。
ソーマだ!僕はそう確信するが早いか、その汁を誰かに奪われないように(主にセミやカナブン)、急いで吸い込んだ。
そして吐いた。
カマキリの出していた汁はソーマではなくアクエリアスだったからだ。
僕はアクエリアスを飲むとお尻が顔になってしまうので、本当に危ないところだった。
しかし、穴の底は本当に真っ暗だ・・
彼女はどうやってここから脱出したんだろう?
そしてこの立ち込めるから揚げ君のにおいはいったいどういうことだろう?
考えても仕方がない。
僕は、右手が壁に触れるようにしながら、穴の底を歩き出した
つづく