超☆未期限



カテゴリ:塩辛と渡世術( 16 )


イタイイタイ

二日酔いで頭が割れそうに痛いです。こんな痛さはアテネを生んだ時以来ないかもしれません。あ、どうもゼウス@立花です。

基本的にお酒はすきなのですが、強くもなく、また、タバコを吸うようになってから、余計にお酒が弱くなり、今まではとりあえず周りから煙たがられようがおきていたのですが、齢26になったと同時にある程度飲むと睡魔に襲われるようになり、寝たらねたで次の日「頭が痛い」の悪循環にすっかりはまってしまっているわけです。

まぁ、お酒を飲む人だったら誰しもわかると思うのですが、二日酔いはきついわけじゃないですか。それはつまり、さ、アルコールって野郎を使って自身にブーストかけてるわけで、当然それを使ってテンション上げた日にはその反動を身に受けなければならないわけで、さ。そういやぁ、昔誰かがいってましたっけかな?人間の脳みその「楽しい」と人生で思える最大量ってそれぞれきまっていて、お酒はもとより怪しい薬だのってのはその「楽しい」を無理くり先取りしてるだけだって。だから、だんだん楽しいと思えないけど、それらが無いとそもそも楽しいが消えちゃう状態になるから摂取し続けないとやってけない、いわゆる中毒者になってしまって、そのそのそのころには脳みそにもう「楽しい」がこれっぽっちも残ってなくて、後はご存知惨めな人生なわけで・・・ってあれ?なにをえらそうに僕は講釈たれながしてるんだ?まぁ、こんな誰かが濡れたコースターに書いたような幸福論なんざ、どうでもいいや。

でつまり二日酔いはきついしできたらなりたくないけど、お酒はやめられない。でもお酒は弱いという三すくみにもならなければ、これが他人だったら即匙を後ろに放ると思うのですが、
いかんせん自分自身がそう思っているわけで、「俺のやりたいことを、俺はできるだけやらせてやろうと思っている」というのをポリシーとしている僕なので、さっそく「飲んでも二日酔いにならないためにはどうすればいいのか」をグーグルで調べたり、教えてgooで聞いたりし、wikiをいろいろ調べて回ったわけです。

有象無象が蠢く現の虚構ネットの海で得た根も葉もつかない情報の中には当然、怪しいものもあり、実践しても効果がない、もしくは余計悪化したなんてのもありましたが、それでも僕は
グーグルに「体に酒を残すのがよくないので吐け」と書いてあればそれを実践し、吐き癖をゲットし、教えてgooに「人体の血流は引力と密接に関係しているので東に向かって拝め」と書いてあればそれを実践し1ヶ月続けて祈ったある日、夢枕に天照大神が立って
「そなたの熱心な祈りに感動した!」なんて抜かして、人も枕元にでっかい樽おいてくもんで「御上様、これは一体なんですか?」って聞きながら樽の封を解くと中からプ~ンとアルコールのにおいが・・・
「そなた、毎夜毎夜泥酔しながらもわらわに祈りを捧げておるが、よほどの酒好きと見たゆえ、この常世秘酒を少し分けてやろうと持ってきたまでよ」
「え?いや、うれしい・・・といえばうれしいのですが・・・」
「まぁ、飲む飲まぬはおぬしが決めなさい。夜更かしはお肌に大敵ゆえ、わらわはそろそろ帰ります」
と、懐に僕のお袋が使っているSK2を忍ばせながら天照大神は常世に帰っていった。
さて、残された僕は、当初と方向性が全然違うとはいえ、思いがけず手に入れた常世の秘酒とやらがさっきから漂わせる、まさにこの世のものとは思えぬ芳香に鼻くすぐられ、心躍らせ「そもそも常世に時の流れはないわけで、その常世の酒で二日酔いなんざ洒落にもならんもんな」なんて嘯いて、早速杓子ですくって一口・・・沙羅双樹の華の下、常者必酔のこのこくまろやかさ!言い表せないその美味に、我を忘れてむしゃぶりつけば、頭に咲き出す現の心理、アレとあれがああなれば、それすなわちビックバーン!そうしてうまれた森羅万象の一片から生命が誕生して、われわれにいたるまでの進化の歴史を5周はして、汝は我で我は汝に程よく補完されたところで意識を失い、次に我を思い出したのが、まさにこの世のものとは思えぬ頭痛でだった。人には過ぎた宇宙の理なんざを見たがためにまさかこの小さな鶏にも劣る脳内でよもやビックバーンがおこるとは・・・しんどい・・・ってあれ?割れそうなほどの痛みを覚えているのは何も頭だけではなく、ふと自分の下腹部をみると、そこでも小さな泥鰌が一匹佇立、いや本人的には怒張か・・しているではないか!!まぁ、僕はまだ26なので、寝起きのそれなら生理現象的にたいしたことではないのですが、今の泥鰌のそのテンションは間違いなく、これから1戦、いや10戦でも100戦でも交えんばかりのテンションではないか?
これはどういうことかと近くに転がっている常世の酒が入っている樽に目をやると、昨日は暗かったので気づかなかったが、そこにはラベルが貼られており
「アラハバキ印の高級泡盛:八塩折の酒 沖縄産八岐の首入り」
・・・・・・どこからどう突っ込めばいいのかまったく検討がつかないまでも、下腹部を何かに突っ込まなければ如何ともしがたいとだけは確かで、早速電話でデリバリーされてきた方5名と1戦、10戦、100戦交えると、あら不思議、交え終わった頃にはすっかり頭痛もどこへやら、さてではデリバリーのお嬢さん方、これから一杯のみには行きませんか?なんて消えていきます赤提灯へ・・・・ってこのよくわからない茶番はこの辺でやめさせてもらうわけにはいかないか?まぁ、ここまで茶番に付き合ってくれている人がいるのかって話ではアル・・モゴモゴ。

まぁさ、とにかく紆余曲折、失敗、挫折、同衾、いろいろあったわけですが、
そんな中から「これは二日酔いに効く!」なんてのベスト3なんか発表したいわけですよ。
この日記書こうとおもったときには、てついさっきなんだが、まさか上記茶番なんて考えてなかったわけで、本当はこのベスト3から話を広げようと思ったのですが、今は遠い昔。
まあいい。酒飲み共よ!二日酔いが怖ければとりあえず次の感じを実践しながら飲めばいいと思うよ。
はい、
第三位飲む前飲む後ウコンの力を飲む
第二位酒の合間合間に水飲め
第一位どんなに泥酔してようが、寝る前に風呂はいれ

え?当たり前すぎやしねえかって?
アホか!その当たり前が先人の頃からできねえからピラミッドの壁画にも
「もう飲まねえ・・・」
って書いてあるんだろうが!まぁ、このベスト3についても講釈たれたいんだが、あいにくこれからドラクエGETしに行かねばならないのであとで思い出したときにでも、自分史としてまた蛇足を増やしておこうと思います。

PS:親愛なる僕へ、どんなに酔っても、人に迷惑かけてもいいけど、体が傷ついているのと、ATMでむやみにお金を下ろすのだけはやめてください・・・次の日ホントいろいろつらいんで・・・

ではいったんこの辺で
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by sansetukon4 | 2009-07-11 13:55 | 塩辛と渡世術

塩辛と渡世術16 理由(わけ)

穴のそのにいきなり現れた居酒屋。そこで僕はどすの利いた声を出すポスターに、相席を勧められた。そして、そこには神様がいた・・


僕はポスターにいられるがまま、神様の向かいの席に向かった。
神様は白いローブのようなものを着ていて、白いひげをはやしていた。
ただ、残念なことに頭には黄色いわっかは浮かんでいなかった。
僕が神様の向かいに腰を下ろそうとしたとき、神様はこちらをちらっと見ると「ども・・」と軽く会釈をした。
テーブルにはすでにから揚げと塩辛、それに焼き鳥が数本あり、神さまは右手に生ビールのジョッキを持っていた。

とりあえず何か頼もうと思い、メニューに手を伸ばしたとき、僕らのテーブルに、ウサギがトレーをもって現れた。そして、トレーから、おしぼりとお通しを僕の前におきながら
「いらっしゃいませー!お客様先にお飲み物のほうお伺いいたします!」
と言った。

残念なことにこのウサギ、懐中時計は持っていないようだ。

僕は「とりあえず生。中ジョッキで」
とメニューを見ながらウサギに言った。
ウサギは「かしこまりましたー!」というと、トレーを脇に抱えながら、ちゅう房のほうに走っていった。

はて?

メニューを眺めながら何を注文しようかと考えていた僕の頭に不意に「?」浮かんだ。
僕は、メニューを閉じ(まあ、こういう居酒屋で最初に僕が頼むものなんていうのは、メニューなんか見なくても決まっていたし)、それをわきに置くと、向かいにいる神様を見た。
僕の頭の中の「?」はさらに大きくなっていく。
見られていることに気づいた神様はから揚げに伸びていた箸を引っ込めて、僕に向かっていった。
「なにか?」

僕は「彼」に聞いた。
「あなたは神様ですよね?」
彼は言った
「え?神様?まさか・・ご覧の通り普通のおじさんですよ」

やっぱり・・彼は神様ではなかった。
すると、だ。なぜ僕はさっき、ポスターに相席を勧められた時、その席にいた彼を一目見たときに彼を「神様だ」とおもったのだろうか?

僕は言った
「いやね、変な話なんですが、僕はさっき、あなたと相席を勧められた時に、なぜかあなたを「神様だ」って思ったんですよ」
「はあ。そうですか。私が神様・・」
彼はビールのジョッキを持つと、そこで一口ビールをあおり言った
「みてのとおり、私は普通の、どこにでもいるおじさんですよ」

まったくその通りだった。
よく見れば、彼はまったく彼の言うとおりの「おっさん」で、神様だと思えるようなところはどこにもない。

「いや~、私が神様ですか。ははは・・」
彼は笑いながらまた一口ビールをあおった。

「お待たせいたしました~!」
そのときウサギがビールをもって現れた。
僕はそのビールを受け取ると、2,3、品つまみを注文した。
ウサギは、その注文を伝票に書くと、また走ってちゅう房のほうに消えていった。

「せっかくですので・・」
僕はグラスともつと、おっさんのほうにグラスを傾けた。
おっさんもそれを受け、グラスをこちらに傾けた

「「かんぱーい」」
カチン!ジョッキは心地よい音を立てぶつかった。泡が傾く。
僕はそのままジョッキを口元に持ってきて、一気にそれをのどに流し込んだ。

「っぱ~~!!うまい!!」
うさぎがもってきたビールは確かにビールだった。
いや、実際は発泡酒なのかもしれない。そんなことはどうでもいい。
兎に角うまい。ドイツ人だろうがなんだろうがこのアジに文句をつける奴はいないだろう。
それくらいうまい。

さて、一気にビールを飲みきると、アルコールで今まで麻痺していたおなかの調子もよくなったのか、急におなかが「ぐぅ」となった。
といっても、まだ僕のおつまみはとどいてないので、さっきうさぎがもってきた、お通しを食べようと、箸をもって、お通しの器を覗くと・・

器の中には、シャープペンシルの芯と赤鉛筆が入っていた。
正確に言うと「赤鉛筆のシャープペンシルの芯まぶし」とでも言うのだろうか・・

「ひどいですよね、ここのお通しは」
と、その様子を見ていたおっさんは僕に言った。
「見てくださいよ、僕のお通しを」
彼は、自分のお通しの器をこっちに寄せた。

中には豆電球と消しゴムカスが入っていた。
こちらも正確に言うと「豆電球の消しゴムカス和え」いう感じである。

「これはどういう意味なんですかね?」
「さあ・・まあ、食べれませんよね」
「そうですね。たべれませんね・・」
と、そこでおっさんは信じられないことを言った
「まあ、相席になったのも何かのご縁。あなたのおつまみが届くまで、一緒に、私のおつまみを食べましょうよ」
そういって、おっさんはから揚げの乗った皿をこっちに寄せてきた。

僕は思った。

やっぱりこの人は神様なのかもしれない

つづく
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by sansetukon4 | 2005-10-10 00:27 | 塩辛と渡世術

塩辛と渡世術第15章 メンス

僕の目の前に居酒屋が現れた。看板には「6時までにご来店のお客様ビール100円」と書いてある。

ごくり、とのどがなった。
僕は自分時間の法則で、今大体5時なのを確認すると(だいたい、両足で立ってみてやや腰が前に来るような状態。アッラーに祈りをささげているイスラム教信者の構え)、メッカの方向に感謝の言葉をつぶやきながらその居酒屋に入った。

居酒屋には誰もいなかった。
冷静に考えて、僕はついさっきまで、いや今も深さんーm、壁はケンタッキーを食べた後の手のようにつるつるしててとても上れないような、そんな穴のそこにいたわけで、そこに何日いるかはわからないけど(途中で2,3度極楽浄土らしきところや、冥土36景的なところにいったのはこの際ノーカンで行こう)、そこには僕を除くと、から揚げ君に異常なまでに執着する巨大な(いや、巨大化していく)新谷千春と、腹からソーマを出しつくしひからびたかまきりと、光の届かないこの穴のそこでもけなげに芽を出したドングリ君だけしかいない。
もちろん、ついさっきまでこの居酒屋なんてものは存在していなかった。

はて?ではこれは・・・
と店内を見回す。それは地上のどこにでもある(むしろ、最近よく見かけすぎて辟易するくらい街にあふれかえっている)某チェーン店系居酒屋の内装そのままだ。
僕は、入って一番近くのテーブルの上にあるメニューを手にとって広げてみる。


たこキムチ399円(税抜き価格380円)
子持ししゃも399円(税抜き価格380円)
軟骨のから揚げ399円(税抜き価格380円)
枝豆294円(税抜き価かk・・・

そのとき不意に誰かに見られているような感覚を覚え、僕は顔を上げた。
・・・
やっぱりだれもいない。
もう一度店内を見回す。
テーブル席が20ほど。どのテーブルにもメニューが綺麗に乗っかっている。
僕の少し右側にはレジ。レジにも誰もいないが、レジの時計は動いていた。

16時58分。

僕と時計と大体同じくらいの時間だ。
そのとなりに営業時間を知らせる紙が張ってある。

営業時間17時から翌3時まで。

もう一度目を店内のほうに向ける。
壁には新メニューのポスターと、ビールをもったグラビアアイドルのポスターが張ってある。

ほんと、どこにでもある居酒屋だ。
僕はもう一度メニューに目を落とそうとした。
そのとき、再び誰かの視線を感じ僕は顔を上げた。

僕の目線の先にはビールを持ったグラビアアイドルのポスターが張ってあった。
そして、僕はそのグラビアアイドルと目が合った。
赤い水着を着て、青い海をバックに笑顔でビールジョッキを握るグラビアアイドル。
彼女の目はプリントされ、死んだそれとは違い、生きた人間の目だった。

その証拠に彼女は僕と目が合うと、すっと、目をそらしてしまった。

たしかに「彼女は目を僕からそらした」。ただ、相手はポスターだ。これが普通の女の子なら、目をそらすのはわかる。いや、むしろ、僕が知っている自分の容姿を考えると、目をそらす程度ではすまないかもしれない。しかし、相手はポスターにプリントされている女の子だ。
ポスターに印刷されたもの(人)って言うのはどんな人と目が合おうとも、目をそらしたり、動くことはない。そう。くどいようだが、ポスターに印刷された時点でそこに印刷されたものは死んでいて、自由はないはずである。(じゃなきゃマルボロのポスターの立ち上がる馬はすぐにずっこけるだろうし、明治のポスターからチョコレートが溶け出してしまう)。
つまり、彼女にはポスターであるために

1、その営業スマイルを持続させること
2、どんなに重たくっても、腕がつっても、ビールのジョッキを自分の頬より下に下げてはいけない。
3、足が砂に焼けても、肌が太陽に焼かれても、水着のままでいなければならない。
4、どんなに暑くても、ビールを飲んではいけない。

これだけの制限があるはずである。
なのにいま、その制限を破り、死んだ営業スマイルを見る人すべてに投げかけなきゃいけない彼女はそれを見る僕から目をそらした。

僕は、彼女を見つめたまま、彼女に近づいていった。
一歩、二歩・・・

彼女の目の前に着いたとき、僕の腹が「グゥ」となった。
どうやら、5時になったようだ。

すると、それまで目をそらしていた彼女は急にこっちをみると口を広げポスターに写っている華奢な彼女からは想像できない野太い声で
「ぃらっしゃいませぇええ!!!」
と言った。

僕は反応に困っていると
「ぉお客様ぁ~、んなんめいさまで~?」
僕は言った
「あ、ああ、一人です・・・」

すると彼女は左のほうに目をむけ
「はぁい、おひとりさまらいてーん!!お客様、あちらの席相席でよろしいでしょうか?」
誰もいないはずの店。なのに相席を進めてくるポスター。

とりあえず、彼女が言うほうを見てみる。
そこには、一人の男がすわっていて、ビールをのどを鳴らして飲んでいた。

あ。
神様だ。

つづく
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by sansetukon4 | 2005-09-20 14:03 | 塩辛と渡世術

塩辛と渡世術第14章 いいわけ

あれからどれくらいの時間がたっただろう?僕は気を失い、目覚め、また気を失い、また目覚め
それだけを繰り返していた。

いま、外はどうなっているんだろうか?
そもそも、いま何時なんだろうか?

現代人の悲しいサガ、外にいる家族や恋人(メタモンLv48)のことより「今何時であるか?」
が気になってしまう。持っていた携帯電話の電源ははるか昔に切れたし、大事にしていた油時計は前回書いたとおり粉々に砕け散ってしまってた。

からだがだるい・・・ぼーっとする。
そういえば、この穴に落ちて以来、何も口にしていない。

なんどか、落ちているから揚げ君(RED)に手を伸ばしてはみたものの、そのたびに巨大な新山千春の巨大な手ではじかれてしまう。
そこで、カマキリが出したソーマに手をつけようとしたが、こちらはとっくに乾燥してしまっていた。

ああ。こんなところで、死んでしまうのか・・・
ボーっとする頭でそんなことばかり考えていた。しかし、今死んでしまったとして、誰が死亡確認をするんだろうか?目の前でひたすら巨大化していく新山千春がまさか僕の死亡確認してくれるとも思えないし、カマキリはとっくに死んでしまっている(しかも、彼が死んでしまったときにぼくは、かれの死亡確認をしてないから、彼が生きてたとして、とても僕の死亡確認をしてくれるわけがない・・・」いや、まて!かれが生きていたならば僕が死亡確認をする必要はないから、そうなると・・・)
そんな堂々巡りを新山千春がから揚げ君を7個食べ終えるまで考えたとき、僕は気づいた。

そうだ。かまきりに時間はわからない・・か。

じゃあどうする?!
と、そこで、かれの存在をおもいだした!

そうだ!ドングリクン!!!

と、彼のほうを見ると、彼はそれは見事な芽を出していた。双葉だ。

双葉といえば、人間で言えば1~2歳。彼に時間概念があるとも思えない。
そもそも、そんな小さな命に「死」というものを見せたくはない。
彼のためにも、僕はまだ死ねない!
急に体に力がみなぎってきた。
しかし、体に力がみなぎればみなぎるほど、僕は「今何時」なのか気になって気が狂いそうになった。

そこで、新山千春がから揚げ君を一個食べるのに使う時間を「1らげ」として、10個食べたら「1やま」、10やまを「1ちはる」そして、3はるで「1日」といする、新しい時間を発明した。
しかし、1やま4らげまで行ったときに新山千春が予想外の行動を取り出した。

そう、げっぷをしたのだ。

その後、彼女は大体4~5らげ毎に一回げっぷをするようになった。あと、彼女がから揚げ君を探す時間も計算していなかったせいで、一らげ自体にもかなりのバラつきが見られる。
こうして「新時間」作戦は失敗に終わった。

どうしたものか?
と途方にくれているとき、僕は昔おばあちゃんが僕にいったことを思い出した!

「朝は4本、昼2本、夜は3本それなーに?」

これだ!
この質問の答えを僕は知っている!そう「人間」だ!
当時、僕が迷わずこの質問にこう答えると、おばあちゃんの鼻がなぜか低くなって終いにはクリリンのように鼻がなくなってしまったというエピソードもあるが、今大切なのは、そっちじゃない。

とにかく、この質問は逆に考えれば、正確に時間はわからないが、とりあえず僕がいまどういう状態で立っているかを見れば、少なくとも「大体」の時間がわかるということになる。

僕は、体を起こし立ち上がった。
間違いなく2本足で僕は立っている!
ということは今は「昼」だ!
そしてさらに、僕は確かに今2本足でたっているが、空腹のせいか、気持ち裏腹体に力が入らず、ふらふらする。何か支えがほしい・・・

これはつまり「昼~やや夜より」ということではないのだろうか?!
てことは、今の時間は大体午後4~6時ということになる!
僕は今の時間がわかりとても満足した。

そして・・・
4~6時といえば会社もそろそろ終わるころじゃないか!
そして、会社上がりといえば今の時期一杯引っ掛けたくなる!なにしろ給料日後だし!

でも、ここは暗い穴の中・・・引っ掛けたくても、引っ掛ける場所もない。
唯一のアルコールであったカマkリのソーマ(神酒)も乾ききってしまったいる・・・

ああ、こんなことなら時間なんか知らなきゃよかった・・
と、途方にくれていると・・・

目の前に居酒屋が現れた。
表の看板には「サマーキャンペーン!6時までにご来店のお客様ビール100円!」という文字がおどっている。

ゴクリッ
のどがなった

つづく
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by sansetukon4 | 2005-07-26 22:34 | 塩辛と渡世術

塩辛と渡世術  第13章 旧式パンナコッタ

無心にから揚げ君を食べている彼女(比較的大きな新山千春)をみていたら、なんか不思議な気分になってきた。そこで、僕はこの不思議な気分の原因を調べるために、常にお守りとしてもっている油時計を懐から取り出した。
するとどうだろう!油時計は僕の懐で木っ端微塵に砕けているではないか!たぶん、落下してきたときに砕けてしまったのだろう。ということは、さっきから僕の胸元から滴っているこのベトベトした液体の正体は砕けた油時計の油だったのか!・・でもおかしい、油時計の油は青い色をしていたはず・・なのに胸元で滴るこのベタベタした液体は黒に近い紫色をしている・・っは!もしやこれは、その昔、僕が一方的に思いを寄せていたチタン合金さんが言っていた「カシスソーダ」というものではなかろうか!
これがあれば、チタン合金さんもイチコロだぜ!やっほーーー☆
などと浮かれていたら、死んだ。
でも、死んだことに気づかなかったから、平気だった。人間気の持ちようしだいで、生死も超越できるということを学んだ。

そんな一人芝居をぶっている僕を尻目に、比較的大きな新山千春はどんどんから揚げ君をむさぼっていく。そして、食べたから上げ君の量に比例するように、どんどん大きくなっていった。

僕は最初その様子が恐ろしくて仕方がなかったけど、どんどん大きくなっていって、すでに「比較的大きな」ではなく「かなり大きな」新山千春になった時点で、すごいことを思いついた。

彼女はすごい勢いでから揚げ君を平らげ、そして大きくなっていく。
が、
床にはまだかなりの量のから揚げ君が存在している。いける!今のままのペースで彼女がこのから揚げ君を食べきれば、きっと「巨大な」新山千春になるにちがいない!
そうすれば、彼女の背を伝って穴の外に出られるではないか!

僕はこのすばらしい作戦を思いついた自分を心底誇らしく思うと同時に、彼女が大きくなりきる前にこの作戦を忘れてしまわないように、かっきから胸元から流れるドロドロした液体を使って、壁にその作戦の内容を書き記し始めた。

ん?おかしい。僕は確かに虫語のほうがうまくしゃべれるし実際3日に一度は光合成をしないとのどの調子がおかしくなるが、人間のはずだ。
そして、人間というものは、ペンとは違い、何かを書き記したいときに都合よく自分の胸からインクのようなものを出したりしない。

するとこれは・・・・

僕は自分の胸元を見てびっくりした!
なんとそこには、ガラスでできた管のようなものが突き刺さっているではないか!
そして、そのガラスが突き刺さったところから、ドロドロと黒がかった紫色の液体がしたっている・・

いったい誰がこんなことを!
と、あたりを見回してみるが、こんなことをしそうなやつなんてどこにもいなかった。
(せいかくには、カマキリとドングリがいたが、彼らはすでに死んでいた)

そして、僕は思い出してはいけないことを思い出してしまった!
そう。たしか人間は胸元にガラスなどが刺さって、血がたくさん流れると死んでしまうということを!!

僕は、死んだ。

で、しばらくして、きれいなお花畑が見える川辺にたどり着いた。
そこには、黒い人、白い人、黄色い人、赤い人、大人、子供、さまざまな人が、何かの順番待ちをしていた。
僕は黄色い人の列に並ばされた。この列はほかの列に比べて、明らかに進みが遅かった。原因は分かっている。

わりこみだ。

決してすべての黄色い人が割り込みをするわけではないのだけど、なぜか、ある特定の人たちは、だた並んでいるという簡単な行為ですら耐えられないらしく、列の先頭まで行って、ガンガン割り込んでしまう。

ほかの僕をはじめとした黄色い人たちは、それをみて不愉快な顔をするだけで誰も注意しようとしない。
で、やっと次が僕の番というところまで来たら、また割り込まれた。

まあ、その人は全身からおびただしい量の赤い血をながしていたからしょうがない・・・

ん?赤い・・血?

そうか!人間の流す血は赤いんだ!
僕はもう一回自分の胸元を見る。

そこにこびりついて乾いている液体は赤くなんかない、むしろ青紫色している!
これは血なんかじゃないんだ!

僕はそのことに気づくと、その列を抜け出し走った。

で、適当に疲れたところで生き返った。いや、正確には元から死んでなんかいなかったので「起き上がった」というほうが正しいのかもしれない。
ま、とにかく意識は再び穴の中に帰ってきた。

目の前には象の30倍はあろう「巨大な」新山千春が、床に転がった彼女からしたらビーズ球程度の大きさのから揚げ君を必死に拾い集めてむさぼっている。

ぼくは、その異様な光景に耐え切れず、再び気を失った

つづく
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by sansetukon4 | 2005-04-13 19:00 | 塩辛と渡世術

塩辛と渡世術 第十一章 鶏鳴

体の右側を壁伝いに回っていると、いろいろなことがわかった。
まずこの空間に満ちているからあげ君のにおいは正確に言うとからあげ君REDのにおいであるということ。その証拠に今僕の耳は4つになってしまっている(僕はからあげ君REDのにおいをかぐと耳が4つになってしまうのだった!!)。
そして、さっき投げ捨てたカマキリから出ていた汁はソーマではなく、バッカスであったこと。
これは、壁伝いに歩いている最中現れた比較的大きなサイズの新山千春が僕に教えてくれたことなので、いまいち信用できない。

さらに、僕はおかしなことに気づいた。この穴の中には最低30人の比較的大きな新山千春がいると(ドングリから)聞いていたのに、いざこうして穴のそこを一周してみても、出会った比較的大きな新山千春はさっきの一人だけだ。
ドングリは僕の8倍切れ者だし、この間のセンター試験も頭から芽さえ出てこなければ、余裕で満点だっただろう。そんなドングリがうそをつくはずはないだろうし、そうなると残り29体の新山千春はどこへ行ってしまったのだろうか?
僕は、さっきであった新山千春を探し出すために今度は体の左側を壁に向け、歩き出した。

しばらく進むと、暗闇にぼんやりと人の輪郭のようなものが見えた。間違いない。さっきであった新山千春だ。
僕は彼女に「のこり29体の新山千春はどこにいったんだ!」と聞こうと思ったが、人とあまり会話をしたことのない僕はうまく人間の言葉が発音できず、使い慣れた昆虫語で「アイダホ生まれのおいしいポテト」といってしまった。

彼女はそんな僕の気色の悪い顔を見て言った
「あなたがこの穴にからあげ君を投げたこと・・それが原因で彼女たちは・・」

僕には意味がわからなかった。昆虫語で今の言葉は「冷凍庫にしまってある手帳の裏を見ろ」という意味になってしまうからだ。
あいにく僕は推理小説の類を一切読まない(むしろ食べてしまう)ので、彼女が投げかけたこの言葉の真意を理解するのに苦労した。

僕のあまりに気色の悪いシンキングポーズに業を煮やした新山千春はお構いなしに独り言のように、それでいて、僕に敵意むき出しの目線を向けながら言った
「私たちは、昔の経歴上からあげ君をはじめとした例のコンビニの商品を見ると死んでしまうのよ・・この意味・・わかる?」

僕はますます混乱した。彼女が言った言葉を昆虫語にすると
「さっきの冷凍庫のくだりはうそだ。いや、うそではない。しかし入っているのがなにも手帳だけではなかろう。そう、冷凍庫にはいっているのは赤いハンカチーフかもしれない!いや、スイカバーかも・・君はどう思う?」
という風になる。彼女はどうしてそこまで冷凍庫の中身に執着するのか?
僕はがんばって考えた。考えた結果彼女につたない人間語で言った
「アラン・ドロン?」

新山千春は僕のことなどお構いなしにからあげ君を食べていた。

つづく
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by sansetukon4 | 2005-02-16 20:36 | 塩辛と渡世術

塩辛と渡世術 第十章 リボーン

ペットボトルを3本ほどならべて、それを頭にテープでくくりつけて

「ピタゴラス!ピタゴラス!」

と叫んでいたら、あなたが本当に叫びたいのは「カラパゴス」だったんじゃないかなと冷静でいて少し茶目っ気のある、黒髪セミロングのメガネ少女(20)が僕に言った。

僕は自分の愚かさにを指摘してきた彼女を恥ずかしさのあまり、L字型の穴に放り込んでしまった。そしてその後、今度は間違いを指摘してくれただけの彼女を殺してしまった自分に後悔して、ローソンでから揚げ君を300個ほど買って、さっきの穴に投げ込んだ。

これだけあれば、飢え死にはしないだろう。

と、安心して、趣味の般若心経をアカペラしていると、なんと、さっきL字型の穴に放り込んだはずの彼女が僕の目の前に現れた。
彼女はどうやってあの穴から出てきたのだろう?あの穴は確か、深さ700メートルで、その壁はイギリス製のオートクチュールで、作った連中が作業中に食べたであろうケンタッキーの油でギトギトしていたので上って脱出はほぼ不可能だろうし、それに、穴のそこには比較的大きい新山千春が30人は生息しているとも聞いた。彼女はいったい・・・・

僕は好奇心を抑えきれずに思わず彼女のわき腹にあらかじめ暖めておいた、枕草子全集をたたきつけた。

彼女は頬を赤らめた。

聞くところによると、彼女の出身国では、男性が家に来た女性に「Jリーグカレー」を出したら、二人は永遠にシネマパラダイスのとりこになる。というしきたりがあるらしい。

つまり、彼女は僕のとった行為を「愛の告白」だと勘違いしたらしい。

あわてて僕は頭に刺さっているペットボトルを一本抜き取り彼女の口に押し込んだ。
こうすれば、彼女に僕の好物の「ピザポテト(レモン味)」を横取りされる心配はない。

安心した僕は、昨日東急ハンズで買った、口にくわえたネットで吹き上げたボールをうまくキャッチする道具を自分の口にくわえて、そのまま彼女の周りをうろうろした。

そうして7時間くらいたったときだった。もう、僕の視線には彼女も、般若心経も、エッフェル塔も映っていなかった。僕の意識はすでに鼻より少し上をさまようボールにだけ集中していた。

そして吹きかける息を調整してこの日792回目の「ガリアバル(オリジナル技。テクニカルルーティーンでより多い点数が入る)」を繰り出そうとしたそのときだった

ずるっ

何かにあしをとられ、僕の体は深く沈んでいった。

なんてこった☆じぶんでL字型の穴にはまっちまった!

長い落下の間に僕はあんな危ない場所でキモランヌ(競技名)をしていたことを後悔しつつも、落下を利用した荒業「レッセナ・ジュガスス」を編み出していた。

やっぱり僕は天才だ!

と思った瞬間、僕の体は穴の底に首からたたきつけられた。

そして、死んだ。

でも、たちこめるから揚げ君のにおいのおかげで、事なきを得ず生き返った。
キモランヌは2678-315で僕の圧勝だった。そのことを対戦相手のカマキリにつたえようとしたが、カマキリは僕のポケットのなかでとっくに潰れていたので諦めた。

このやろう、卵までうんでやがる!

と、彼のなきがらを投げ捨てようとしたとき、彼の体から何か汁のようなものが出ているのに気づいた。

ソーマだ!僕はそう確信するが早いか、その汁を誰かに奪われないように(主にセミやカナブン)、急いで吸い込んだ。

そして吐いた。

カマキリの出していた汁はソーマではなくアクエリアスだったからだ。
僕はアクエリアスを飲むとお尻が顔になってしまうので、本当に危ないところだった。

しかし、穴の底は本当に真っ暗だ・・
彼女はどうやってここから脱出したんだろう?

そしてこの立ち込めるから揚げ君のにおいはいったいどういうことだろう?

考えても仕方がない。
僕は、右手が壁に触れるようにしながら、穴の底を歩き出した

つづく
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by sansetukon4 | 2005-01-17 01:25 | 塩辛と渡世術

塩辛と渡世術 第九章 純愛小説 後編

いま、目の前で彼女は白い煙になって空へ上っていっている

僕の心はからっぽだった。

まるで、サンタクロースがこなくて空っぽの靴下を持ってただ泣きじゃくる子とものように
いくら待ってももらえるはずはないプレゼント。

昔の僕ならば望んでいたであろう、どこまでも沈んでいくような感覚と静けさ。

僕にはもう必要ないと思っていたものだけが僕の靴下にあふれるくらい入っている。
そして、かけがえのない存在が無常にもこの手をすり抜け消えていった。

不意に彼女の笑顔が頭によぎった
彼女はいつも笑っていた。消えてしまう直前も…
そう、あの日まちを彩っていたどのキャンドルライトより、暖かく…

彼女が孤独だったと知ったのはその直後だった

一人きり、僕だけがいま、彼女がどんよりと厚い雲をはり小雨が降りしきる天へと上っているのを見上げていた。

そういえばいつの日だったか、いつものようにあの喫茶店で君とおしゃべりしていたとき
家族連れが来店してきた事があったっけ?
後にも先にも、あの日以来僕ら以外のお客を見る事はなかったけどさ。
あの時、君はその家族連れのほうをずーっと見ていたよね
僕は最初、僕ら以外のお客が珍しくってそうしているのかと思ったけど
でも、あまりに長い事彼らを眺めているもんだから思わず

「どうしたの?知り合い?」ってきいたら
君はわれに帰ったようにこっちを見て
「ううん。……違う。私たち以外にもここにお客さんが来たのが珍しくて」
「そっか」
「それに…」
「ん?」
「…なんか、あの子、あんまりにもおいしそうにチョコレートパフェたべるもんだから」
君はそういってまたいつもの笑顔を僕にくれたよね。

あの時の君の笑顔の裏にあったものを僕には理解できなかったんだね。
君は最期に言ってたよね
「頼りにしすぎて、身勝手だったよね…ごめんね」って

でも

本当は僕のほうこそ君により過ぎていたのかもしれない
僕にやさしさをくれた君に甘えすぎていたのかもしれない
僕は君が思っていたほど君を支えて上げられていたのだろうか?

過ぎ去っていった一瞬一瞬に言い訳しても仕方ない事だとしても
前を向けるだけの自信をぼくはもてないよ

君がくれただけのものを…僕は君にあげれてたのかな?


僕は君の吸い込まれていく空に向かってその答えのない問いかけを投げかけた
何回も、何回も


帰り道、僕はあの歩道橋の上から空を眺めていた

「空は無限じゃない。回っているだけ。其れとおんなじで明日だってまわってくる。こっちの都合なんかお構いなしに…そして、いくら望んでも昨日という日は帰ってこないんだ…
おかしいよね?回っているはずなら、いつか明日なんかじゃなくて昨日が来てもいいって言うのに…」

ビルとビルに区切られた狭い空は何にも言ってくれない

「ひどいもんだよな。生きてたって、死んじまったって結局は、同じところをぐるぐる回るだけなんて。しかも、そんな厚い雲に覆われたところをさ。」

そういい捨て、ただ空を眺め続けた

どれくらいそうしていただろう?絶えず降っていた小雨はだんだんその勢いを弱めていった。

そして

雲を突き破り一筋の陽光が僕の眺める四角い空にのぞいた
まっすぐな光の筋は2本、3本と数を増やし雲を突き破っていく

ついに雲は陽光に破られ、そこにぽっかりと大きな穴が開いた
その穴からは青く澄み切った空が見えた

「空は回っていなかったんだね。考えた事もなかったよ、僕が見ていたそらに、その向こう側があるだなんて……だから、回っているだけだとおもっていた毎日ですら振り返るとかけがえのない時間におもえるんだね。」

何本もの光の筋は雨で冷え切った僕の体を包むように射した

「ありがとう。ぼくは、いや、しばらくは落ち込むかもしれないけど、それでも大丈夫。やっていけるよ。最期に一つだけ君にお願いしていいかな?…いつになるかわからないけど、僕がそっちに行く前に、見つけておいてほしいものがあるんだ。無限の景色を眺める事ができる歩道橋と……

「「お客が来ない喫茶店」」

「いってきます」

「え?」
たしかに彼女の声だった。

「…いってらっしゃい」

光が射しこむ、無限の空を僕はお気に入りの歩道橋の上から、いつまでも、いつまでも眺めていた


fin
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by sansetukon4 | 2004-12-27 16:08 | 塩辛と渡世術

塩辛と渡世術 第八章 純愛小説 中篇

君が街の景色に溶け込むように消えた後、僕はすぐに携帯電話をとりだし、そして、さっき教えてもらった番号に電話した。

プルル…ガチャ
呼び出し音が一回も鳴らないうちに彼女は電話に出た。

「すぐかけてくると思った。」
さっきまで聞いていた、彼女の心地よいこえが受話器から響いた。

「好きだよ」
「私も」

それだけ。初めて交わした短い電話。でも、今迄で一番二人の距離が縮まった電話。

僕らは恋人同士になった。

でも、だからといって、今までと何かが「劇的に変わった」というわけではなかった。
よく、彼女(もしくは彼氏)ができたやつが「今俺の(私の)人生はばら色!」とかいうが、そんなことも特になく、僕たちは付き合う前からしていたような歩道橋から始まるデートを繰り返していた。

そう、変わったことといえば、僕の好きな景色に君が映るようになったのと、新しく君の部屋から眺める朝日が加わったことくらいだった。

「わたし、朝日を見ると「ああ、また新しい日に自分がいれるんだ!」ってうれしくなるの」
僕の隣でそう言ってわらうと君は大きくあくびをして、また笑った。

「変わったことを言うね。新しい一日にいられる権利なんて、君が昔言った空みたいに、こっちが望んでなくても回ってくるもんだよ。」
そういって、朝日の光に目を細めながら僕はセブンスターをふかした。

「そう、新しい日々も回っているだけ、無限じゃないもの。だから、一回一回が貴重に思えるの。変かな?」
このとき、僕の前で彼女は初めて沈んだ表情をした。

「わからない。少なくとも僕はそう感じたことないから…でも、ここから見える朝日は君と同じで僕も好きだよ」
そういって僕は彼女の沈んだ顔を頬ですくいあげ、やわらかくキスをした。

彼女の顔はまたいつものように笑っていた。



それから何個かの季節が通り過ぎていき、冬がやってきた。
12月も中ごろになると、乾いた寒さの街をクリスマスのイルミネーションが飾っていった。

前は作り物に見えたその光景を僕は違う気持ちで眺めていた。

君と過ごす初めてのクリスマス。「いつもと変わりはしない」とおもっていたけど、その日が近づくにつれ、街がクリスマス色に染まるにつれ、心が高鳴っていった。


そしてイヴまで3日とせまった日、君は病院のベッドにいた

駆けつけた僕に気づくと君は少しやつれた顔をこっちに向け笑いながら言った

「ごめんね。かくしてたわけじゃないの。」

「どうだっていいよ。そんなこと」

「ごめんね。イヴも一緒に過ごせないや」

「どうだっていいよ。そんなこと」

「もとから長くなかったんだ…わたし」

「……」

「あなたに出会ったあの日も、本当はあそこから飛び降りるつもりだった。なんか、自暴自棄?になっててあのとき…でも、隣で幸せそうにあの景色を見ているあなたをみて「ああ、この景色を私で汚しちゃいけないな」って」

「……」

僕の知らなかった事実。そして訪れる長い沈黙


「変わりにあなたに飛び込んじゃった感じになって、でも、すごい幸せだったから、今生きているんだな、この人の中にいるんだな、っておもったら、言えなくて…あなたの中の私がいる景色汚したくなくて…ごめんね」
彼女はいつか僕に見せた、あの沈んだ表情で僕に言った

「わがままだったよね。迷惑だったよね。ほんとうにごめんね。」

僕は言った
「あやまるなよ!嘘にしようとするなよ!それに前言っただろ!明日なんてこっちが望んでなくても勝手にやってくるもんだって!だから、だから、諦めるなよ!また…君の部屋で朝日を見よう。あの景色を見よう。」

「…そうだね。あなたの言うとおり。ごめんね。」

そういうと彼女は静かに眠りについた。

そして小雪がぱらつくクリスマスの夜


街にあふれる幸せそうな顔も、イルミネーションもクリスマスキャンドルの光も
作り物にしか見えないものがあふれかえる街の片隅にある病院で

彼女は 死んだ

最後に話したあの日以来、結局目を覚ますことなく。
安らぎの満ちた表情で。

言えなかったMerry X'mas
目覚めることのない彼女の眠るその病室で僕はその伝える相手のいない言葉をただつぶやいていた。


つづく
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by sansetukon4 | 2004-11-17 11:00 | 塩辛と渡世術

塩辛と渡世術 第七章 純愛小説

人が人を好きになるのはなぜだろう?

さめた学者に言わせれば「子孫繁栄という生物のプログラム」この一言で片付いてしまうし、軟派なやつに言わせれば歯の浮くような、くだらない言葉の羅列で片付けられてしまう。

僕も実際「人と人が愛する」という行為なんて言葉で片付けられる、そう、奇麗事だと思っていた。

君に出会うまでは。

はっきりしない天気のその日、僕はあてもなく街を歩いていた。いつものことだ。

街はやさしい。そう、人と人がかろうじてつながっていられる距離を保ちつつ、それでいて絶対にお互いに干渉しあわない。だから、僕は街がすきだ。

早足で通り過ぎる人々の中を歩き、歩道橋を上った。そこから見る人々の姿も僕は好きだった。

そして、そこに君がいた。

僕は最初、別段君を意識せず、少しはなれたところで、流れる街を眺めていた

すると、君はこっちにやって来て言った

「なんで高いところにまで上って、わざわざ狭い世界を眺めるの?どうせだったら、空を眺めたほうがよっぽど有意義よ」

街では干渉しあわないことがルールだ。ぼくは、ぶっきらぼうに言った

「ここから眺める、空に無限の大きさがあるって言うのかい?見てごらん。ここから見えるのはあそこのビルとこっちのビルが区切ったわずかな空間だけさ。だったら、ぼくは下を眺めてそこに流れる、景色をみるさ。こっちのほうがよっぽど無限に変化している」

彼女は笑いながら言った。

「空は、もとから無限なんかじゃないわ。回っているだけ。それに、空に無限を求めるくせに多くの人はその光景を写真にとって残そうとする。矛盾してると思わない?でも、実を言うとねわたしも空なんかより、ここから眺める下の景色の方がすきなんだ。だから、あなたが私と同じ景色を見てたんで、興味が出てきて…ルール違反だったかしら?」

「別にかまわないよ。下を眺めていたのは誰かとこうして話したかったから、きっかけがほしかったからなのかもしれないし。」

「じゃあ、もっとお話しましょう。ここから見える、あそこの喫茶店、一度行ってみたかったんだ!」

彼女が指差した喫茶店は僕もいつも眺めていた「お気に入り」の喫茶店だ。お客が入ったところを見たことないし、マスターはまるで機械仕掛けみたいにただカップを磨いている。あの喫茶店。

僕たちは、その喫茶店で何時間も話した。
その間にやっぱりお客は1組も来なかったし、マスターはずっとカップを磨いていた。
コーヒーは思ったよりおいしかったし、彼女も頼んだレモネードには満足そうだった。

「よかったら、また会いましょう。これ、私の電話番号」
「もちろん、よろこんで、でも、電話番号はいらないな。僕は毎日のようにあの歩道橋であの景色を見ているから、またあそこで会おう。そのほうが僕たちらしい」

そういって分かれたのが、先週のけだるい火曜日のことだった。

そして、今週の火曜日もまた僕らは、あの歩道橋であって例の喫茶店でおしゃべりした。

別れ際、僕はもっと彼女としゃべっていたい、一緒にいたいと思っている自分に驚き、そして自分で作ったルールをあっという間に破り、電話してもいいかな?と聞いた。

彼女は笑いながら言った

「そうね、最初は私がルール違反してあなたに話しかけたんだし。今回はあなたの番ね」

そういって、笑うと電話番号をくれた。

街にあふれた無機質な空気よりも、あの歩道橋からの景色よりも、僕は彼女が好きなんだと気づいたのは、このときだった。それは、いままで生きてきてこの口から発したどの言葉より、この頭が考え出したどんなことより、この目が見てきたどんなものより、リアルだった。

3回目にあったときに彼女にその気持ちを伝えた。騒がしい金曜日例の喫茶店で。

3回目に会う前に僕は2回も彼女に電話していた。そして何時間も飽きることなく話していた。電話で聞く彼女の声は、現実の彼女の声よりもっとやさしくきれいだった。

「……きみは電話だと、声がもっときれいになるんだね」

「なにそれ?」彼女の心地よい笑い声が響いた。

僕は、別れ際、自分が彼女を好きだということを伝えた。
言葉にしたらあっけないくらい簡単に…
彼女は言った

「その言葉、今度また電話で言ってくれる?わたしもあなたの受話器越しからのこえ、好きよ」

そういって、彼女は街の景色の中に溶け込むように消えていった


つづく。
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by sansetukon4 | 2004-11-10 00:49 | 塩辛と渡世術


街は後いくつの戸惑い投げかけるの?
S M T W T F S
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